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DX-CO・OPプロジェクトの源流を探る(後編)

日本生協連 DX-CO・OPプロジェクト プロジェクトリーダー 河野敏彦
株式会社T 保科剛

何のためにDXに取り組むのか、目指すものはどこにあるのか。生協は今後は新たな発想で力を合わせてDXを推進し、アフターデジタルな社会に貢献していきたい。プロジェクトリーダー河野敏彦と、伴走する保科剛が、「DX-CO・OPプロジェクト」の源流からアフターデジタルに至るまでを語り合います。

【保科剛プロフィール】
株式会社T 代表取締役、日本ユニシス株式会社 エグゼクティブアドバイザー
1990 年台より、政府情報関係政策委員を歴任し、現在の政府情報政策基盤の構築に貢献し、日本の情報処理業界をリードしてきました。現在も、経産省や情報処理推進機構の委員を拝命しながら、コンサルタントとして活躍しています。

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海外情報の収集によって、生協のDXをイメージする

保科 先行する海外事例などは、DXの源流というか川が流れ始める前の雨のイメージがありますね。

河野 海外の情報を収集することで、DXを考える上で非常に参考になりました。

保科 2020年2月の準備プロジェクトの前に、CES(※)に行かれてたんですよね。これから生協のDXを始めるぞっていう中で、新しい発見はありましたか。

河野 CES2020は事業会社の出展が多く、顧客体験の革新に取り組んでいました。飛行機に搭乗するときに、同じディスプレイなのに、それぞれの人にそれぞれの国の言葉で出せますよという展示をする。自分の便の荷物の受け取り場所も日本語で表示されるのが実現できている。

※CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー):ラスベガスで毎年1月に開催される電子機器の業界向け見本市。CES2020ではデルタ航空の基調講演が話題になった。ブースではチェックインカウンターから搭乗口に向かう模擬体験ができた。「パラレル・リアリティー」という技術を用いたディスプレイは、100個のLEDアレイの上にカスタム設計のレンズを組み合わせ、映像に指向性を与えることで、見る角度によって任意の映像を見せられる。最大100人までの利用客に“異なる情報”を同時に表示できる。

保科 河野さんに最初にシャジールに会っていただいたのは2月ぐらいでしたよね。シャジールはインド人なんですけど、シリコンバレーでベンチャーキャピタルをやっていて、日本企業とも非常に接点を持っている。彼と数年前から、日本はいつもアメリカを追いかけてるばかりだが、日本とインドとアメリカの3極で新しいビジネスモデル、日本が一番前に躍り出るくらいのことやりたいという話をしていた。彼にはアメリカのDX成功事例などを教えてもらったりもしました。

河野 シャジールの会社にアーキテクチャーを書いてもらってマイクロサービスでいけばいいという話にはなったんだけどね。なかなか思いどおりには進まないけど、大きい風呂敷広げたり、いろんな情報を入れたりしながら、広げた風呂敷と身の丈の間のせめぎ合いをしています。

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日本の生協の独自性はDXでどうなるか

保科 昔の銀行は判子と通帳が必要で、同じ銀行なのに支店が違ったら自分のお金も下ろせなかった。そのうちにオンラインでできるようにしようとか、さらにはプラスチックカードでできるようにしようって進化していった。

生協もデジタルがない時代に地域密着型で存在しているけど、ITがあるんだったらもうちょっと横につながったらいいんじゃないかとか、発注のやり方も変えようと進化している。でもアフターデジタルはデジタル前提で、組合員も職員もみんなスマホを持っていて、地域の差はある意味だんだんなくなっている。

海外の生協や小売業とか含めて、参考にしたらいいようなものがありますか。

河野 世界的には協同組合は育成すべき、保護すべき対象であって、規制する対象ではない。でも日本には生協法(消費生活協同組合法)という規制があります。

イタリアは10の大きい生協が全土にまたがって仕事をしているけど、組合員相手にやっている。全国連合会はあるけど、サービス会社を作って商品開発を請け負っているのでB2Cなんです。イギリスはブレア政権の時に全国一本で合併したから巨大生協になってるし、アメリカはオーガニック生協みたいなマニアックな生協として町別に生き残っている。

保科 アフターデジタルのイメージでDXを考えていくと、そういう紐解きがある種の指標となるのかもしれませんね。

河野 日本の生協の場合は、生協本来の役割を発揮するためにも、力を合わせていってDXを進めたいと思います。

生協はDXによってアフターデジタルな社会に貢献できるか

河野 このプロジェクトは、日本の生協を日本の人々にとって価値あるものにするというのが大前提なんですよね。だから日本全体の生協がこの後どういうトランスフォーメーションをしてアフターデジタルな社会に貢献するのかっていう議論をしていきたい。そういう非常に大それた切り口で始まっていて、『これからの生協』にもその思いを込めてもらっています。

保科 それがこのDXプロジェクトなんですよね。だからこそ価値観共有がすごく重要だと思うんです。変革をするには、MVV(※)の中でも最後のVのところが重要で、まさに今までの自分たちの価値観を変えることじゃないですか。

※MVV(Mission、Vision、Value):組織の存在意義や役割を定義し、メンバーで共有するためのフレームワーク。外部環境変化が激しい状況において、これまで以上に重要であると言われている。

河野 と言っても、波がきたらその波を乗りこなせるか、というふうに課題が提起されているのが現実なんですけどね。

保科 ビフォーデジタルは山登り、アフターデジタルは波乗りなんですよね。デジタル化はフォーキャストで今あるものを改善していく、今ある業務を便利にするってことなんだけど、日本の多くの企業がそこで止まっている。DXは全く違う未来の話をしているっていう記事が日経新聞(※)にも出ていました。

※日経新聞:DXとデジタル化の違い「説明できない」管理職が7割(日本経済新聞2021年9月21日)

河野 これから関わってもらう人をもっと増やしていくつもりだから、みんな頑張ろうっていう思いが伝わるといい。生協活動自体がアフターデジタルを描いていかなくちゃいけない。難しいけど、そこにチャレンジしていく。それこそがこのDX-CO・OPプロジェクトなんです。

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全2回の連載となりました「DX-CO・OPプロジェクトの源流を探る」、いかがでしたでしょうか?
これまでの振り返りを含めて、今後どのようにDXを目指していくのかを語りました。このnoteでは、DX-CO・OPプロジェクトについての情報を続々と発信していきます!
引き続きよろしくお願いします!

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