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生協DX学習会レポートvol.6~仕事のDX第2弾 クラウドツールをもっと使いこなす~(前編)

今回は、「チャットを軸にした仕事のDX」についてProduct Founderの増井雄一郎さんを講師としてお招きした生協DX学習会の様子をお届けします。増井さんに講師をお願いするのは今回が2回目です。

▼前回の記事はこちら

今回はツールを使いこなす実践編の位置づけで、チャットが機能するフラットな環境を作るヒントがいっぱいです。

【増井雄一郎 プロフィール】
Product Founder & Engineer
中学生の頃からプログラミングに興味を持ち、高校生の頃にはアルバイトでシステム制作を担うように。大学在学中、1999年にWeb制作会社を創業。その後フリーランスのエンジニアを経て、2008年アメリカに拠点を移しシアトルでBigCanvas,Inc.を創業。世界初の写真共有SNS iPhoneアプリをリリース。2011年に現ミイル(株)を、2013年に(株)トレタを創業。2019年7月にBloom&Co.に参画。著書「Ruby技術者認定試験合格教本 Silver/Gold対応 Ruby公式資格教科書」など複数。

●チャットによってコミュニケーションを深める

第1回のプレゼン「仕事の効率が大幅にアップする最新ツールと活用例」では、おすすめのデジタルツールとDX推進に必要な人材について話してくれました。

第1回のプレゼンのなかに、「チャットで書かれたことが指示なのか、文句なのか、ニュアンスがわからないことがあります。そのときは、基本的にポジティブに受け取る、自分は攻撃されていないと思うことが大事です。書くほうがいくら失敗しても、聞くスキルが高ければ、それってこういう意味に捉えたんですけど合ってますかと聞けます。そのためには、心理的安全性があることが大事です」といった内容がありました。

その話を聞いた参加者からは、「先輩や上司だと言葉づかいを気にするが、ツールを使う際に読み手が配慮する、お互いの関係性が大事だと気づいて、同じプロジェクトの社員とはそういう認識を持とうと、よりコミュニケーションができるようになった」という意見がありました。

それに対して増井さんは、「既に読み手が配慮して、上下の関係性を超えて話ができるように進めているのは素晴らしい。今回は、チャットの技術的な話やツールの使い方よりも、その中で変わる文化みたいなものをどう作っていくかを話したい」と応えました。

また事前アンケートでツールを使いこなせていないとの回答が多かったことに対して、「ツールが使いこなせることはほぼない。僕らが学ぶ速度より、マイクロソフトやGoogleが新しい機能を作る速度のほうが明らかに速いからです。自分が使いこなせてないという認識があることはすごく大事で、そういう違和感を嫌なことと思わないでくれるといい」と励ましてくれました。

プレゼン「コミュニケーションとDX チャットを軸に置いたDX」

●DXで何の課題を解決するのか~社内コミュニケーションの課題

コミュニケーションはすべての業務に関わるもので、コミュニケーションをDXすれば業務全体の生産性向上にもつながります。

社内コミュニケーションには、次のような課題があります。

(例)
・話したいときに話せない
・メールだと書くのに時間がかかる
・集中して何かやっているときに限って、電話や声をかけられる
・記録が残らないので、言った言わないになる
・会議のスケジュール合わせが困難
・会議でしか話せない場合、意思決定できる回数が限られる

●同期から非同期に

このような課題を解決する方法には、チャットとビデオ会議があります。
コミュニケーションのDXとして、ビデオはわかりやすいが、チャットをみんなに使ってもらうには少し工夫が必要です。

ビデオ通話がなじみやすいのは、今まで目の前で話していた関係がビデオになっただけで、ルール自体は同期コミュニケーションで、言ったらすぐ返ってきます。それに対してチャットは非同期になります。

非同期の長所としては、相手の時間を奪わないことです。どんなタイミングで読むかは受け手に左右されます。何時何分に誰が誰に対して何を話したかという記録が残ります。また、口頭よりも細かく具体的な内容を伝えることができます。

短所は、即時性がない。いつ返事が返ってくるかわからないし、忘れさられてしまうかもしれない。発信する側はしゃべるほうが楽で、「読み手を配慮する」ことは書き手にとっては負担が増えるということです。また、目を見て話せないので、書き手の気持ちがわかりにくい。人を意識するのがすごく難しい。

これに対してビデオ会議のような同期コミュニケーションは、今ディスカッションしてるという形で、目の前の課題については解決までもっていきやすい。

また、目が怒っているとか、身振り手振りとか、モノを見せるというような、文字にできない情報が伝えられます。そして、それによって人を人として認識できるので、つながりが意識しやすい。また、議題外のことも話しやすいという長所があります。

短所は、参加者全員の時間を取られることで、例えば10人で1時間の会議をしたら、時給5000円で換算すると5万円のコストがかかります。議事を正確に残すことや、全員顔を合わせるための時間調整も困難です。

●非同期コミュニケーションで変えるところ

チャットは、IT業界では十数年前から使われてきました。今他の業界でも受け入れられているのは、参加者全員の時間を取られる、時間調整が困難、意思決定の回数が限定されるなど、同期コミュニケーションのマイナス面が増えてきたからだと思います。ただし、非同期ではコミュニケーションの仕方を大きく変えなくてはならないことを、意識して行う必要があります。

皆さんはSlackを使っているときアイコンを設定していますか。人と人とのつながりには、写真の力は大きいので、デフォルトのアイコンではなくて、それぞれの顔でアイコンを必ず設定してください。

また、「読み手を配慮する」ということは、発信側の負担は増えます。その代わりチャットなら相手の時間を奪わないし、記録が残るので何人も、場合によっては検索も含めて後で何十人も読むことになります。めんどくさいと思っても、必ずチャットで発信してください。読み手の負担を減らしているという認識とともに、なるべくチャットで書くことを意識したほうがいい。即時性が必要であれば電話やZoomを使い、そうじゃないときはチャットにするなど、メディアを使い分けるといいと思います。

メッセージを送って返事がないときは軽く催促する。スタンプとかライトなコミュニケーションがいい。Slackの機能を使って、ちょっと面白いアニメのアイコンとか、「お疲れ様です」という絵文字を作ったりできます。

時間外通知や必要のない通知を切る機能は、積極的にみんなに周知していくことが必要です。働きすぎる人がチャットを見ると、働きすぎをさらに促進してしまう傾向があります。Slackではルームによっては通知を強めに切って、どうしても必要ならDMを送ってくださいというように通知の制限をする必要があります。

●ルールがあると発言しやすくなる

Slackで時間外の設定をしていると、その時間にメッセージを送っても通知はされない。どうしても通知をしてほしい場合には、時間外の設定をしましょうとか。チャットでも最初に偉い人が返事をしないと、他の人たちが返事ができないようなことはやめましょうとか。偉い人にしゃべるときも、若手にしゃべるときもちゃんと丁寧語で話しましょうとか。ヒントや心得があると発言しやすくなります。

ヒント・心得をSlackやTeamsのどこかのチャンネルに書いておくとか、社内にNotesやGaroon(ガルーン)があるのならそこに入れておく。会社のチャット文化をなるべくフラットにすると、発言しやすくなります。

例えば「お腹減った」って書いて、許される会社と許されない会社があります。大きい会社ならみんながランダムに「お腹減った」とは書けない。でも僕がいるような会社だと書いてもいい。僕用のチャンネルをオープンにしてあって、ただ独り言をつぶやくチャンネルに「お腹減った」と書くと、誰かがお昼食べに行きましょうと言ってくれます。そういう個人のチャンネルを作ることを推奨している会社もあります。ヒント・心得は会社ごと、組織ごとに作るといい。ルールがあると心理的安全性が増すのです。

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Slackでの自分の顔のアイコン設定は、DX-CO・OP内部でも名刺代わりとして設定するルールがあります。最初は、自分の顔なんて恥ずかしいなあ、と思っていましたが、背景が海で撮られた写真をアイコンにしているメンバーと実際に話す際に「アイコンの写真はどこで撮影されたんですかー?」「よく遠出をされるんですかー?」と会話のネタになったことを思い出しました。ツールを入れるだけでなく、みんなが発言しやすい環境をどうやって作っていくか、それぞれが努力していくことが重要なんですね。

次回(後編)では、チャットが社内コミュニケーションで力を発揮するためのカギとなる「心理的安全性と相互信頼」の重要性と、チャットでしかできないことを考えます。


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