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DX-CO・OPプロジェクトの源流を探る(前編)

日本生協連 DX-CO・OPプロジェクト プロジェクトリーダー 河野敏彦
株式会社T 保科剛


未来の「生協のあるくらし」をイメージするところから、DX-CO・OPプロジェクトは始まりました。プロジェクトリーダーの河野敏彦と、プロジェクト立ち上げに尽力した保科剛が、アフターデジタルの考え方と生協DXが目指すものを紐解きます。

【保科剛プロフィール】
株式会社T 代表取締役、日本ユニシス株式会社 エグゼクティブアドバイザー
1990 年台より、政府情報関係政策委員を歴任し、現在の政府情報政策基盤の構築に貢献し、日本の情報処理業界をリードしてきました。現在も、経産省や情報処理推進機構の委員を拝命しながら、コンサルタントとして活躍しています。

顧客体験の抜本的な革新を目指す

保科 「DX-CO・OPプロジェクト」の源流を探るということで、河野さんに改めてお話を伺います。よろしくお願いします。

河野 こちらこそよろしくお願いします。

保科 生協のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指すプロジェクトの始まりはいつごろでしょうか。

河野 最初にDXについて保科さんに相談したのが2019年秋ごろですね。これからはDXの時代だと思うんだけど、どうしていけばいいんだろうかと作戦会議をしましたね。

保科 今でこそ超のつくバズワードのDXですけど、2019年の時点で、DXに着目したのはどうしてですか。

河野 次の時代に必要なものは、レガシーなシステムを単にデジタルに置き換えることではありません。DXはシステムの課題と捉えられがちですが、それだけでは次の時代に対応できないと感じました。時代の変化をどう読み解いて、それにどう対応していくのを全職員で一緒になって考えていきたい。そういう思いでいました。DXとは未来に向けての挑戦です。

アフターデジタルにおける生協の姿は何か、それ自体をまずはみんなで共通認識していきたいという結論に達しました。その課程で、DXとは「デジタルでこんなことができる」よりも前に、顧客体験の抜本的な革新を目指すものであることを学びました。

バックキャストアプローチが有効

保科 生協におけるDXって、ICTの高次化だけでは解決できない、何か違うことを考えなくちゃいけないという思いがあったということですか。

河野 DXを推進していくために、まず『アフターデジタル』を書いたビービットの藤井さん(※)に“生協版アフターデジタル”ともいうべき『これからの生協』を執筆してもらいました。そして、そこに描かれた未来の姿を実現するために具体的なマイクロサービス群を作ろうということになりました。『これからの生協』を作った上で具体化に取り組んだけど、どうしても壁にぶつかる。ぶつかる中で目指す生協の姿に立ち戻りながら執念深くがんばっていかなくちゃいけない、その基盤を作っていました。

※ビービットの藤井さん:2019年にベストセラーとなった『アフターデジタル』の主著者である藤井保文さんは日本と世界のDXの大きな隔たりとして、DXの目的は新たなUXの提供であることが十分理解されていないこと、また、アフターデジタルの社会が見えてきているのに、いまだにリアルをメインにデジタルを付加価値として捉えている現状に違和感があるとしている。

保科 バックキャストアプローチが『これからの生協』にまとめられているんですよね。

河野 2030年、2040年に生協を使ってる人たちがどんな生活をしているかを物語風に描いて、その顧客体験に向かっていく、まさにバックキャストアプローチなんです。

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DX-CO・OPプロジェクトに込めた思い

保科 改めてDX-CO・OPプロジェクトに込めた思いをお聞かせください。

河野 事業環境の変化としては、当然ながら新型コロナウィルスの感染流行が挙げられます。経済ダメージの回復には、世界で4、5年を要するとも言われています。生活者にとっても食生活の価値観や、買い物(食品購入)、調理に関する変化も起きています。

それとともに買い物体験の変革と飛躍は生活者中心に移行していきます。そこにどれだけ対応できるかがカギになってきます。

特に今の若い人たちにはデジタルネイティブ、SDGsネイティブが当たり前になり、日本では急速にデジタルが生活に溶け込む「アフターデジタル社会」に突入します。アフターデジタル社会において、デジタル中心で組み立てられた買い物体験を作り出し、生活者に自然と生協が選ばれていく、そのための圧倒的なサービスをご提供するということです。

保科 アフターデジタル社会における生協の姿は具体的にどのようなものですか。

河野 広い世代に加入していただく、自然にコープを使い始め、そして楽しむ生活者が増えていくようなデジタル社会のコープになることを目指したいです。特に若い世代に対応した新しい生協を作る、若返りを図ることが必要だと考えます。

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なぜ生協にDXが必要なのか?

保科 DXとはデジタル技術を使うと言いながらもお客様との接点作りであり、生協が若い世代と新しい関係性の中から、より高度なサービスを創出していくことだと思います。

ところで「DX○○事業」ではなく、「DX-CO・OP」という言葉をあえて使った理由はありますか?

河野 今の延長線上では、アフターデジタルな時代には対応できません。そのためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)した生協を築く必要があります。そういう思いでDX-CO・OPという名前を付けました。「コープをDXしよう」というよりも「DXしたコープをみんなで作るんだ」という思いを込めています。

20代・30代の若い世代が自然に生協に入ろうということで末永く関係を築き、豊かな暮らしにつながる社会を目指していきたいと考えています。そのためにも新しい時代の組合員に寄り添った事業をどう組み立てるのかという本質議論を深めていきたいと思います。

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「DX-CO・OPプロジェクトの源流を探る(前編)」いかがでしたでしょうか?
次回(後編)では、アフターデジタルの社会に貢献する生協のDXのあり方について語ります。お楽しみに!

みんなにも読んでほしいですか?

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